忠臣蔵

 いわゆる忠臣蔵とはちっとも関係ない。後に忠臣蔵と呼ばれる資料をつきあわせて、実際の「忠臣蔵」の様子をなるべく具体的に再現しようとしたもの、それが推理小説のようでもあり、まさに研究ってこういうものなのねって感じをただよわせて面白い。しかし、「忠臣蔵」に一つの画期を見ているのだな。「歴史的事件としての『忠臣蔵』のドラマにあって、そのハイライト・シーンはー筆者の見るところではー吉良邸討入りの場面にではなく、その翌12月15日深夜、愛宕下の仙石伯耆守邸周辺にあったのではないだろうか」(188頁)。そして、この時点で徂徠はすでに国家構想を展開しているのだな。