漁民の世界

 以前、農村の構造を勉強したとき、あわせて漁村の勉強もしたいと思ったのだが、漁村の方がより水平性が高いが基本的には同じという程度の知識でしかおさえていなかった。後は、土地持ってると強いらしいとか。この本にある程度出てくる。

近代以降も、漁村の旧本百姓は村落支配で大きな力を持ち、漁場の権利も彼らに占有されていた。ーーー、そこは、土地所有にもとづく階層関係や生産手段の所有関係によって秩序づけられていた。つまり、地先沿岸の農村は「漁村」とはいえ、農村的な支配秩序におおわれているのだ(67頁)。

 さらに年齢階梯制は沿岸部に集中しているという。そういえば、「若衆宿」なんて話があったな。

技能により階層化された組織は若者組と密接に結びついていた。若者組は青年層からなる年齢集団であり、一人前として漁業の重要な仕事を担う世代である。村仕事としての性格の強い寄り魚漁では、若者組が漁撈組織の中心を支える集団になるとともに、漁業の訓練や指導という役割も果たしていた(74頁)。

 また、移住してくる入漁民は許可漁業や自由漁業を行うことになるが、地元漁民が従来と同じようにいくつかの漁法を組み合わせて漁業暦を構成したのにないして、「一つの漁撈技術に特化して、それを専門的に行っている」(181頁)。しかし、これは変動に対処するのを難しくするから、移動をひきおこす要因ともなる。

漁民の世界 「海洋性」で見る日本 (講談社選書メチエ)

漁民の世界 「海洋性」で見る日本 (講談社選書メチエ)