G・H・ミードの動的社会理論

 この本の内容、とりわけ前半を強引にまとめてしまうと。『精神・自我・社会』と『行為の哲学』と『現在の哲学』は、それぞれ一つの循環関係をなしており、それが自己から社会的世界の成り立ちまで進むようになっている。
 まず、「私(I)」はこうした「私(me)」を触発し、また「私(me)」に触発されるかたちで創発してくる循環的な関係にある。つまり、「私(I)」は過去の「私(me)」(一般化された他者)と未来の「私(me)」(他者の役割取得)介して更新されていく。
 次に、ミードの行為(act)論は、行為とそれに相関した世界ないしはパースペクティヴの成立と結びついている。ミードは知覚表象の世界と接触経験の世界を区別し、知覚表象の世界を背景に接触経験の世界の成り立ちを説明し、接触経験の世界の成立から反省を介した知覚表象の世界を説明する。接触経験の世界は実際の行為から成り立ち、知覚表象の世界は行為の潜勢性から成り立っている。つまり、二つの世界は循環的な関係にある。
 さらに、現在、ひいては未来や過去も二つの局面からなっている。一つは接触体験や「私(I)」と結びつく「みせかけの現在」に入り込んでくる過去や未来であり、もう一つは反省を介してそこから切り離された「過去」の集積としての「現在」であり、そこから一般化された「未来」を予言できるようになる。当然、この二つの現在は循環的な関係にたち、「みせかけの現在」において創発してきたものは反省を介して「現在」に取り込まれる。こうして社会的な世界と自己との循環的な関わりが説明されることになるわけである。
 

G.H.ミードの動的社会理論

G.H.ミードの動的社会理論