内海健さんが医学書以外の本を出したのでどんな本かと思ったら。最初はリベットの実験か、近代的狂気としてメランコリーとスキゾフレニーをあげるのは分かるが(もっとも、メランコリーは日独に特異的という話もあるようだが)、そこまでもっていく前半の話はちょっと緩くないだろうか?メランコリーの話は面白かったが、スキゾフレニーはカフカに頼りすぎな感じがするな。「出立の病」とも呼ばれるけどやはり「青年期」と自律に結びつけられている。で、その先をいくのがトラウマということになる。ここでは、トラウマは現実に起こったこととされていて、言わば、経験的なものが超越論的なものの機能的等価物として置き換えられているという構図になるのかな。しかし、そのようにみなされているというなら分かるが、トラウマを現実の出来事と断定するのは引っ掛かる(この辺は斉藤環が指摘している)。
母という原初的対象から分離される時、自己は母を対象として発見する。だがそれは、すでに剥奪のトラウマによって欠如が刻み込まれたものとして見出される。「悪い対象」とは、このトラウマに他ならず、それた対象の中に欠如のしるしとして跡をとどめている。このトラウマは自己に先行し、自己を覚醒しようとさせるものである。他方、「よい対象」とは、悪い対象の到来以前にあったものとして想定される幻想的次元のものである(183頁)。
- 作者: 内海健
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/05/01
- メディア: 単行本
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- 作者: 斎藤環
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