会田誠展

 一部では「児童ポルノ」という指摘もあった会田誠展へ行って見ることにした。彼の作品はまとめて見たことがなかったし、彼の作品がある意味で悪趣味というか、キッチュなものであることは当たり前なので、何を騒いでいるのかという興味もあった。女性もずいぶんいました。
 まあ、最初の感想はやはり彼の作品の持ってる迫力にはすごいものがあり、アメリカと日本のつながりを意識したような作品もあったり、戦争画をひねったような作品もあったりと、とにかくいろいろと作品を見ていくのが楽しかった。そして、問題とされた「犬シリーズ」は18禁部屋と題されたスペースでゾーニングされている。まあ、この「18禁部屋」そのものがコンセプチュアルなものに思えた。というのも、その外側にある作品でも「18禁部屋」に入っておかしくないような作品がある一方、ここに入れなくてもよい作品もあるように思えたからだ。ま、現実の18禁もそのような線引きだろうから、まさにこれがコンセプチュアルなものに感じられたというわけだ。
 この18禁部屋のなかでもひときわ強い印象を与えていた作品群がこの「犬シリーズ」だった。他の一連の作品を見るなかでこの作品を見た私は、事前に「児童ポルノ」云々という話を聞かされていたにもかかわらず、これを見て「児童ポルノ」とは思えなかった。本人も書いていたけれど、マンガ、アニメと日本画って言うのはどこか連続したところがありこの絵もそうした作風のもとに書かれており、手足を切断された(と聞いたときはもっと違ったものをイメージしていた)姿は、ちょっと「芋虫」を連想してしまったりもしたけど、この作品にある種の批評性を感じさせるものになっていると思う。もちろん、素材が「児童ポルノ」の類なのだから、主題として取り上げられている絵を見ていけば「児童ポルノ」にあたるのかもしれない。だから、実際、これを不愉快だと思う人も出てくるのだろう。他方で、その手のイメージを保持していなければ、それに対する批評性も示すことができないわけで、それが面白いと思うと「児童ポルノ」云々ということはあまり気にならなくなってしまう。
 しかも、まがりなりにも18禁部屋と題されて警告もある部屋に展示されているのだから、どうも私にはこれを「児童ポルノ」と騒ぐ必要性があまり感じられなかった。多分、展示する側からすれば、そうした反応も織り込み済み(デュシャンの泉みたいに)で、逆にそこから作品の芸術性を訴えていくことができる一方、「児童ポルノ」と訴える人たちは、その外側から批判しようとするから、きっと話し合いの機会を持っても(持ったらしいが)話がすれ違ってしまうのではないかと思った。いずれにせよ、私にとっては面白い展覧会であった。