日本文学史

 読み残しの部分も。『日本文藝史』という化け物のような名著がある小西甚一の小著*1。こんなに薄い本なのにすごい切れ味でとても勉強になる。また、後書きおよび解説での著者とドナルド・キーンとの交わりをめぐる逸話も大変美しいものである*2。研究者たるものこうでなくちゃね。
 メモ取り出すと小著なのにかなりの量になるので、基本的なところだけとりだすとには雅と俗を区別し、俗=古代→雅=中世(含む近世)→俗=近代という歴史的変遷で日本文学史が捉えられている。そして、近代における「文学literature」という概念の流入は「表現者と享受者が共有した圏、すなわち「雅」の世界が破れたということなのである」(191頁)という話になる。
 むかし読んだ丸谷才一の『日本文学史早わかり』も、たしか文藝を支える共同体の有無で話を論じていて、こりゃ日本版『零度のエクリチュール』だなと思ったことがある。しかし、こうなるとハーバーマスのいうような文芸的公共圏というのはどういうことになるのでしょうな。
 

日本文学史 (講談社学術文庫)

日本文学史 (講談社学術文庫)

日本文学史早わかり (講談社文芸文庫)

日本文学史早わかり (講談社文芸文庫)

 

*1:

日本文藝史 (1)

日本文藝史 (1)

日本文芸史 (2)

日本文芸史 (2)

日本文芸史〈3〉

日本文芸史〈3〉

日本文芸史〈4〉

日本文芸史〈4〉

日本文芸史〈5〉

日本文芸史〈5〉

*2:

日本の文学

日本の文学