なかなか書き進めずたまたま手近にあったこの本を手に取ったら、困ったことに私が取り上げたいと思った論点の少なからずがこの本の中で指摘されている。これまで読んできた和辻がらみの本でここまで踏み込んだものはなく、また、この議論にまともに言及しているものもない。とすれば、私としては別の視点から同様の議論を再構成し、新しい知見を付け加えるべく努力すべきなんだろうな。戦後になり、
そのときの和辻の見解は、天皇主権から国民主権への国家体制の根本的変革にもかかわらず、国民全体性の表現者としての天皇の地位にはなんらの変更も生じない、そしてこの天皇によって示された教育勅語の内容は、国民国家の立場にふさわしい道徳要領として、戦後社会にもそのまま通用する、というものであった。和辻の『倫理学』および『日本倫理思想史』はこの見解に立つことによって完成されている(13頁)。
何もいうことはない。両方読めばふつうそう思うよな。というのに、管見の及ぶかぎりそんなこという人はほとんどいない。やはり、これは問題でしょう。
- 作者: 山田洸
- 出版社/メーカー: 花伝社
- 発売日: 1987/09
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログを見る
近代日本道徳思想史研究―天皇制イデオロギー論批判 (1972年)
- 作者: 山田洸
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 1972
- メディア: ?
- この商品を含むブログを見る