日本倫理思想史

 金曜はやはり疲れているせいでもないが、3冊目の半ばをすぎて思うに、和辻先生、話が長いのですが。『倫理学』にもそうしたところがありましたけど、むかしの大先生がうんちくを垂れる調子が疲れた身に応えると同時に、それを酒で麻痺させたくなります。戦国時代の武士の倫理思想の根幹たる「正直」、「慈悲」、「智恵」も日本古来のそれに遡ることができるものなのですね。次は、これと儒教を連続させるのですね。「それは力を正しいとする倫理思想ではなくして、正直、慈悲、智恵の理想を個人の心構えや気組みの中に貫徹しようとする自敬の道徳、高貴性の道徳なのである。それは必ずしも儒教道徳と本質的に結びついたものではなかった」。(140頁)。
 とはいえ、やはり見ているところは見ているんだよな。たしかに、力を持って支配するという大名や武士のイメージからすれば、これは一見する奇妙なのかも知れないけれど、戦国期が下克上の世の中で上にたつためにはむしろそれだけの器量がなければつとまらなかったのである。このあたりは勝俣本で*1。でも、これって、日本にこだわらなくても人とかかわるうえで通用しそうなマキシマルな道徳じゃあありませんか?だから、儒教とも相性がよかったりするわけですよね。

戦国時代論

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